我々は人生での経験を通じて、痛みがどのようなものであるかを学習します。長らく、医療従事者は痛みを専門的に学ぶ機会がありませんでした。そのため、自らの痛み体験や治療経験に基づき、患者の痛みに対処してきました。急性痛はそれで上手くいくことが多いでしょう。しかし、慢性痛は急性痛同様に扱うと、良くするどころか却って悪化させてしまう場合があります。なぜなら、痛みには感覚的側面だけでなく、情動的側面、認知的側面があり、長引けば長引くほど、それらが複雑に関わり合い、難治化してしまうからです。
そこで、当科ではペインクリニック専門医が中心となり、集学的痛みセンター(https://www.itami-kumamoto.net/)を開設し、診療にあたるだけでなく、慢性痛診療システムの構築や人材養成に努めています。毎週、理学療法士、公認心理師や看護師とともにカンファレンスを行い、痛みを多面的に評価、診断し、患者各々に適した治療(痛み教育、薬物療法、神経ブロック療法、脊髄刺激療法、認知行動療法など)を行っています。